Kinectといえば2011年突如登場し、内蔵センサーでユーザーの動きを認識するモーションセンサー。
初代Kinectセンサーは1000万台にとっぱした家庭用電化製品世界最速記録としてギネスワールドレコードに登録されるなど輝かしい成績を収めていましたが2013年にリリースされた後継機、Kinect v2は記録的な失敗に終わっています。
一体何故Kinectは失敗してしまったのでしょうか。
Xbox Oneの後継機Xbox One Xの発売が迫る中、今一度Xbox Oneの原点を振り返ってみたいと思います。
Kinect v2の内容をおさらい
Kinect v2は従来のKinectが640x480pのカメラを搭載していたのに対し1920x1080のフルHDカメラに変更されています。
また深度センサーも512x424と高解像度化し、人物認識も従来の2人から6人にアップグレード、0.5m~4.5mの幅広い距離で利用できるようになりました。
機能の違いとしては指先まで認識できる高精細な制度、顔の表情を認識、カメラの前にいる人の心拍数を皮膚の微細な動きからリアルタイムに認識するといった機能が盛り込まれていたことでした。 パンチや筋肉の動きといった動作の認識も出来るようになりゲームに組み込むことがより簡単になる”はず”でした。
【失敗理由1】Xbox Oneのローンチ失敗
そもそも根本的な失敗としてXbox Oneの発売時の印象がゲーマーから最悪だったことが上げられます。
従来Xboxシリーズといえばゲーム機としては最高のパフォーマンスを備えたマシンとして性能を求めるゲーマーから人気のマシンでした。 しかしXbox OneではPS4より少し劣る性能に加え、ゲーム機能よりもテレビ関連の機能やKinectがアピールされたためゲーマーからかなり反発を受けてしまい、Xboxのお膝元アメリカでも発売当時はそれほど売れてませんでした。
このことからコアゲーマー向けの機能ではないKinectがバンドルされていることが槍玉に挙げられ、マイクロソフトは当初の方針を変えKinectなしの本体を標準本体として売り出しました。さらに後に発売されたXbox One S、Xbox One XではそもそものKinect接続端子がなくなりました。 USBアダプタ経由で接続出来る物の、Kinectを重視していない姿勢は明らかです。 もし本体のゲーム性能がもう少し高ければ、こんなことにはならなかったかもしれません。
Kinectがバンドルから外されたと共に利用者が伸びることが望めないとされ、大手ゲーム開発会社のKinectゲームの開発は殆どなくなってしまいました。
【失敗理由2】リテラシーが追いついていなかった
「Xboxオン」と呼びかければXbox Oneの電源がつくという機能はXboxローンチ時アピールされていた機能です。
しかしこの機能があるため電源を切っていても常にKinectマイクが動作しているため、盗聴されているのではないかという疑惑が浮かび上がりました。
当時は「Spy box」と言われ、非常に問題になった機能ですがスマートフォンが当たり前になった現在から考えれば「hey Siri」「OK Google」だって常に呼びかければ認識しますし、スマートフォンのカメラやマイクの方が常に身近にある存在ですが議論になることは殆どありません。
2013年に音声認識を前面に押し出すのは早すぎたようです。
【失敗理由3】v1よりも開発が難しかった
Kinect v2はリリース当初SDKの出来が良くないとしてKinect v1ほど開発者の注目を集めませんでした。 ローンチ当初目玉とされていたKinect Sports Rivalsが延期を繰り返していたことからも相当苦労したものと思われます。
開発難易度の高さからKinect対応タイトルの開発が思ったほど上手くいかず、同じシリーズでもXbox360の頃のタイトルの方が出来がいいといわれるタイトルも多いという結果になっています。
またKinect v2をつかうには高性能なマシンパワーが必要だったことからも敷居が高いとされていました。
というのもKinect v1では発売から数年経ったXbox360の周辺機器として発売された経緯から、Kinectの認識に関する計算の多くをKinect側で行っているとされていましたが、Kinect v2ではパワフルになったXbox Oneで処理させようとしたためKinectを有効にするとゲーム側のクオリティを落とさなくてはいけないという問題が生まれてしまっていました。
そのためグラフィックスを少しでもPS4に近づけようと当初計画されていたあらゆる機能を削っていった結果、リリース当初は多くのゲームで対応されていたKinectもすっかり見る事がなくなりました。(システムのKinectジェスチャーも削除されています)
発売当初はXbox Oneの性能の約2割も占有するといわれていたKinectのパワーをオフに出来るようにしろとゲーマーからの多くの要望があったという背景もあります。
さらにKinectゲームは動作テストの度に全身を動かす必要があり、普段デスクで作業をしているゲーム開発者にとってKinectゲームは体力的に厳しかったのではないかという背景もあったように思われます。
【失敗理由4】体感ゲームブームの終焉
任天堂のWiiが流行していた頃は多くのゲーム開発会社が新しいゲーム体験を目指し様々なゲームタイトルを開発していました。
しかし任天堂が2012年にWiiの後継機WiiUを発売し、「WiiスポーツU」「WiiフィットU」といったWiiで人気だったタイトルを投入するもWiiの頃ほど注目されなかったことから、任天堂は体感ゲーム路線をやめ、ゲーマーに向けたタイトルを中心とした路線に変更しています。
体感ゲームで一番影響力があった任天堂が体感ゲームを作らなくなったことでサードパーティもこの分野に力を入れなくなり、Kinectタイトルが開発されることもなくなった物と思われます。
Kinectの今後
Kinect v2が再び注目されることはこの先ないかもしれませんが、KinectのテクノロジーはHololensなどのデバイスに大きな影響を与えています。
また街角のデジタルアートの展示やゲームセンターでKinectを見かけることも少なくありません。
Xbox OneのゲームタイトルではインディーメーカーVirtual Air Guitar Companyが何故か定期的にKinectタイトルを作っているほか、UBISOFTのJust danceシリーズも毎年リリースされておりダンスゲーム好きにはまだまだ楽しめるハードとなっています。
発売当初の「なんでもできて未来を体験できるエンターテインメントマシン」を期待していた筆者としては今のXbox Oneは非常に複雑な気持ちですがまたいつかKinectの楽しいゲームタイトルが発売されることを期待しましょう。
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